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                                    異空の神


第1巻



第 3 章

現 実 の 異 空



 ハイジャック


ブライアンにとって本当に奇妙な情況だった。何処にも連絡をとる相手もなく、
僅かこの数日前に転がり込んだばかりのこのコンドミニアムで留守番なのだ。

一人になると急にランチはどうすればいい、夕食はどこかでやはり一人か、
などもともと一人暮らしだったとはいえ、軍や研究所の職員といつも一緒で気にもしていなかった、
孤独という、言葉が頭の中で渦巻き、記憶の何処かにあった、 
 ♪ Lonly Im so lonly♪というメロディーが聞こえてくる気がした。

リビングのソファーに身体を投げ出し「取りあえず、また考える事、それが必要」
とつぶやき頭を巡らし始める。
この世界ではブライアン=デイブという式がほぼ成り立つとすれば、
死んでしまったことにより、
デイブは友人を失ってしまっている、
アトランタから来たことになるブライアンにも友人は居ない。
それと実際は遥か以前に居なくなっているアトランタのブライアン・ラウルにも友人は居ない、
今のブライアンには友人どころか只の知り合いですらこれから作らない限り一人も居ないのだ。
知り合いだろうと友人だろうと、人間関係の流れの中で生まれるものであって、
いきなりは、作れないものだと、妙な感心をしている自分に苦笑さえうかんでくる。

魔法や超能力で人の心や行動を操ることができたとしても、
自分自身の心の問題は解決できないということを痛いほどに感じていた。
この世界で今から何処かの会社とか組織とかに身を投じ人間関係を生み出すというのは、
時間も努力もかなり必要な感じだった。

この世界で獲得したらしい自らの信じられないような能力を考えれば、
多少の資金はそれほどの不自然さを生じさせず、投入できる・・・・
小さな企業を買い取るというのも手かも知れない。
これから先その辺も念頭に街を、企業を見ているようにしなければ・・・・

この世界における自分の存在についてもこの先十分、心していかなければならない、
今のところ特に人目につくようなことをしていないつもりだったが、
あの日系ホテルの裏道であった強盗の一件もエリザベスに咄嗟に説明したように、
気功の技という言い訳がそうそう通用する訳でもない。
せめてあの強盗達にはこの事を一切忘れるよう、
しっかりと暗示をかけておくべきだったかもしれない、
今後はより周到に物事に対処するよう心がけるべきだ。
間違っても特別な注目を浴びることのないよう、
特にFBI,CIAのアンテナに引っかかるようなことのないようにすべきなのだ。

さもないとこの世の中の油断ならない仕組みはブライアンの異常な能力とその存在を嗅ぎ当て、
干渉、あるいは排除という動きを見せかねないのだ。
軍人として国家機密に触れる任務に携わってきたブライアンにはその危険性が充分に想像できていた。

そんな想いに浸り、ブライアンは改めて、
自分自身のアンテナを働かせることが出来ないものなのか、思念を周りに凝らしてみた。

驚いたことにごく近いところで起きたと思われるコンビニストアの
強盗殺人事件を必死に叫ぶ警察官らしい思念が感じられた。
ブライアンがもう少し早くアンテナを働かせることを発想すれば
実はより重要でブライアンも直接関わる事になる事態の始まりを知った筈だった。
効果があるかどうか分からないながら、ブライアンは今後、
もし自分自身がそのような思念の対象となるようなことがあれば敏感に感じ取れるよう、
自らに言い聞かせていた。そしてその後も静かにブライアンの思いは巡らされていった。

「うっかり、人目につくような行動をしてはいけない」超能力的な行為、
行動を人に知られるということは、そこに注目した人間一人一人に対して、
そのことを忘れさせるため、意識、念を放ち、
気力を注がなければならない事態を引き起こしてしまう。
身の危険はなんとか、かわすことが出来たとしても、
何らかの面倒が起きないという保証はない。
それとこのままの状態ではエリザベスという素晴らしい存在は別として、
充分余る財産を抱えた孤独な引退人生のようなものになってしまう。

若くして、空しい人生を送るようなものなのだ、只、「金に不自由しない、
超能力で物事を動かすことができる」では人間としての生き甲斐は手に入らないのだ。
そろそろエリザベスがLAXを飛び立って1時間ほどにもなるはずだ、
漠然とした意識でブライアンがハワイでエリザベスにプレゼントされた
ロレックスに目をおとした時だった。

突然頭の中で警報が鳴ったのだ。
「貴方、ブライアン通じるかしら、緊急事態かも知れないの・・・
私に念や意識をとどかせてもいいから」
「テレパシーとかで返事をして」

エリザベスの差し迫った思念がブライアンに届いたのだ。
「エリザベス・・僕に心を開いて」・・・真剣に意識を集中したブライアンの脳裏に機内の様子が浮かぶ、
特に変わった様子は感じられなかったがエリザベスは何かを感じ取ったのだ。


エリザベスがまだブライアンと朝食を摂っていたちょうどその頃、
FBIとロス警察の混成部隊がかねてから内偵を続けていたイスラム過激派組織
「アラーの聖戦士」のアジトを急襲し4名のテロリストをテロ行為準備集合罪で逮捕していた。
しかし行動をともにする筈の残り4人は取り逃がしてしまった。
留学生の身分で潜行していたダリア・シャーリフの存在がどこにも浮かんでこなかったため
前の晩から彼女のアパートに潜んでいた彼女と他の3人を把握できなかったのだ。

ハイジャックした航空機を使ってのテロが計画されているという噂が
FBIの一連の捜査の発端だった。

エリザベスの乗務したLAX発NY行き国内線250人乗りのボーイング機は
ほぼ満席の情況で何の問題もなく離陸し安定した飛行に移っていた。

ただ正副2名のパイロットとエリザベスだけが知らされていたのだが、
ロス近郊で国内テロ容疑者4名の逮捕という事態が生じ、
秘密裏にFBIの武装エージェントが乗り込んでいた。
外面ではほんとうに気のいいビジネスマンという感じのエージェントは
機の最後部右側の全体が見渡せる位置にのんびりとした風情で座っていた。
彼の名はダンカン・トラビス、何事もなく旅を楽しむのんきな「おっさん」を
演じているつもりだったが、内心、気を張り、用心深くしていた。


「エクスキューズミー サー」
「間違えてこちらの棚の方に荷物を入れてしまいましたの」
反対側の座席から立ち上がった黒髪の美女の声にも油断なく身構えていたつもりのダンカンだったが、
美女の次の一言で完全に注意をそらされてしまっていた。
「あの右の通路側の座席、から立ち上がろうとしているひげの若い男性、
何か上着の胸の中にもっているわ」
「あれ、なにか武器を隠しているんじゃないかしら」
ダンカンが半分立ち上がり美女の言う方向に完全に気をとられる。

そのとき女が右手に握った細いプラスティック製の筒のような物をダンカンの首筋に
打ち付けたのを誰一人見ていた者はいなかった。

美女の名はダリア・シャーリフ、FBIも気づかなかったテログループのNO2だった。
武器の調達と秘かな搬入を受け持ったグループの4人が逮捕されたことを
組織のメンバーからの携帯による通報で知ったダリアたちは、
この場合、機に乗り込むと思われたエージェントの武器を逆に奪うつもりで
犯行予定を変えなかったのだ。

ダリアが素早く探ったダンカンのジャケットの下には大型拳銃が隠されていたし、
左右の足首にまで小さな銃がベルトで止められていた。
ダリアは今さらのように、ダンカンを倒した1滴の毒ガスの威力に驚き、
不安さえ覚えていた。意識を失わせるだけ、と聞かされていたのだが、
彼は死んでしまっているように見えた。

エリザベスが異常に気づいたのは離陸後1時間半ほど経ったあとだった。
そっと様子を見やった、あの席で例のエージェントが首を後ろに倒し、
アイマスクで目を覆っているのを見たときだった。

隣の席から黒髪の女が、いたわるように覗き込んでいる。
女は濃い眉の目鼻立ちがハッキリとした美人だった。
薄い枯葉色のやや厚地と思えるゆったりとしたスカート
或いはキュロットに、シャツというスタイルは女戦士のようにも見える。

絶対におかしかった。彼に連れが居る筈がないし、
おまけに離陸後1時間すこしで任務を放棄して眠りこけることなどあり得ない、
と思うと電撃的に頭の中で警報が響きだしたのだ。
エリザベスはもしかしたら彼女はテロリストでは!
エージェントがジャケットの中に隠していた筈の銃が彼女に奪われているかも、
と思うと矢も盾もたまらなかった。

騒ぎ立てて事態をかえって悪くしてしまうことを考えると
ブライアンが言っていたテレパシーのコンタクトを試してみようと思い立ったのだ。

ダリアも混乱していた。今回の作戦はこの機をハイジャックすることにより、
テログループの戦力を誇示し、
囚われているパレスティナ戦士の釈放を要求しながら
最後は南米の友好国に着陸させ、その後は逃げればいいという、
考えてみればかなり杜撰な話だったのだ。

それ以上の目的、目標は逮捕されたと聞いている、
NO1のハッサンが一緒に機に乗り指示する筈だったのだ。
NO1のハッサンからの連絡が途絶え、
彼とそして行動をともにしていた3人が逮捕されたらしいことを知ったダリアは
“計画は中止”と判断していた。
そんな状況で、計画の続行を、飛行機の出発直前に通告し
さらに、武器の調達方法、とハイジャックの目的、目標を伝えてきたのは
ダリアも良く知らない上部組織の幹部を名乗る人物だった。

本来予備のツールとして支給されたあのプラスティックの筒のようなものを使用して、
エージェントの武器を奪えという指示だった。

「ロスで逮捕されたグループ4人の即時釈放を要求しろ、
さもなければ飛行機を墜落させる、と言え」
というのがその人物からの指令だった。
FBIが簡単に要求に応じるとも思えない、
さらに良く知りもしない上層部の幹部を名乗った電話だけの指令に命をかけることは
ダリアにとって本当は論外だった。
既に死んでしまった恋人のアリが居ればこそ、の組織だったのに、・・・・
取り残されたダリアはいつのまにか8人のグループのNO2ということにされていたのだ。

16歳のときにアリに誘惑されそのままアリが何をしている人物なのか知らない間に、
いくつかのテロ事件に関わり、恐ろしさに、
何度も、心配している筈の両親の元へ逃げ帰ろうと泣いていた。
アリと一緒の4年が過ぎたあの日、「明日には帰れる」と言い残しでて出かけたたアリが、
二日後に突然、死んだと知らされたのは、半年前のことだった。
留学生という立場で美術関係のカレッジに席をおいてまだ1年も過ぎていなかった。


ロスのコンドミニアムのブライアンにとってこの世界に飛び込んでしまってから後での、
初めての混み入った情況だった。
エリザベスの乗った機の情況が明確には掴めないのだ。
ブライアンは頭のなかで必死にエリザベスに呼びかけていた
「エリザベス・もういちど君の心を僕に開いてみてくれ、
君が見ている物、君に聞こえている音が僕に届くように意識してみてくれ」
突然ブライアンの頭にエリザベスの見ている情況、音がハッキリと伝わりだした。
「ブライアンこれでどう」

「素晴らしいよ、君の目と耳で捕らえた物が全部伝わってくる」
「今のところ特に何も起きていないようだけど、なにがあるんだい」
ブライアンが少し不満そうに意識を送ってくる。
「私が見る方向、こっちから見て左の一番奥、黒い髪の女が見える?」
「奥の窓側でここからは良く見えないけれど、
彼女の隣にFBIの武装エージェントが警戒乗務していたの。
それがアイマスクをして死んでいるみたいに動かないの」
そのとき女がゆっくり立ち上がると通路を前方に歩き出した。
予期していたように振返る通路の左、黒いひげの若者に自然な仕草で声をかける。
女が一瞬の動作で若者に何かを手渡したのをエリザベスもブライアンも見逃さなかった。
女はさらに二列まえまで進むと一瞬よろけるような動作でまた通路の今度は右側の席に手をつくと、
やはりまた何かを手渡したのだ。そのあと女はエリザベスのすぐそばまでやってくると
「済みませんが、ジンジャーエールはあるかしら?どうしても飲みたくなって」
というとエリザベスの手渡したプラコップの飲み物をゆっくりと飲み干し、席に戻っていった。

「どうも良く分からない、怪しまれないように、
そのエージェントの様子を見られるところまで、移動できないかな」
「やってみる」エリザベスが棚の閉まり具合をチェックするようにゆっくりと機の後方へ移動し、
あの女が目線を落として何かを考えようとする様子を見澄ますと例のエージェントの姿をとらえる。

ブライアンの意識にハッキリと男の姿が映り、
エリザベスを通した一瞬の強烈な念が男の状態を把握する。
男は明らかに死んでいた。
ブライアンは「ウ、ウ」と声を出しそうになるエリザベスの心をなだめる念を送り、
心のなかで「ゆっくり、元の場所まで戻るんだ」とささやきかけていた。
ブライアンが把握した事態はエリザベスにも伝わったのだ。

「次に何か動きがあったらまた意識を集中した呼びかけをしてくれるかい、
このままじゃ対策を考えることもできない」
ブライアンの伝えてきた言葉にエリザベスも「了解」と答えていた。


ロスのコンドミニアムでソファーに座り遥か彼方のエリザベスと連絡を取り合い、
様子を探り続け、さらにその間に対策を練るというのはかなり困難なことだった。
ブライアンの頭の中でこの事態の展開、成り行き、それに対する対処、・・次々と思いが巡っていた。
「彼女や、仲間と思われる男達多分少なくとも二人はいるようだ、が何時、
どんな行動に出るのか、何を要求するのか?武器はどれだけ手にしているのか?」
「二度何かを手渡したと思ったのが正しければ、多分武器だろう、
どうやって持ちこんだのか、或いはあのエージェントから奪ったのか」
ふと思いつきブライアンはTVのスイッチをオンにしてみた。
いきなり目に入ってきたのはブライアンのいる辺りから数キロ南、
と思える住宅地のアパートで4人のテロリストが逮捕されたというニュースだった、
逮捕されたテロリストのグループはほかにまだ4人ほど居る筈で
FBIとロス警察はそれを取り逃がしたというのが真相らしかった。
ブライアンの頭の中で、ニュースの逮捕劇とエリザベスの乗務機の事態がハッキリ結びついた。

「あの黒髪の女と他の何人かが取り逃がしたと報道されているテロリストだとすれば
当初の計画が狂った状態で何かの行動に出ようとしている事になる」

「それに、あの女には筋金入りのテロリストという匂いがない」
ブライアンはエリザベスに気どられぬよう探った女のあれこれを思い返していた。

なにか釈然としていない精神状態、恋人を失い、半年近く・・・
その喪失感のほうがはるかに他の問題を上回ってきた事、最近カレッジで知り合った長身の教師・・・
漠然とながらそんな彼女の思いが伝わってきた。

彼女自身が気付かないように、思念を送り事件を解決する方法はあるかも知れない。
それにしてもハイジャック事件は起きなければならないのだ。
無理やりブライアンの念だけでこの事態から、
何事もなかった。という事に持っていった場合、
いまやこの女の運命への責任を感じてしまうだろう。
女はNYに到着してから後、組織の命令に従わなかった裏切り者として付きまとわれるだろう・・・
多分そこまでブライアンが責任を感じる必要はないのかもしれなかっが。
しかし、彼女の意識の表面に浮かんだ「裏切りに対する、
組織の執拗な追及と残虐な報復の恐ろしさ」はブライアンに、
何か良い解決ができないものかという悩みを与えてもいたのだ。


ブライアンには女が組織からも、FBIやその他のアメリカ側の機関からも追われず、
自由になれる道を一番望んでいるのが感じられた。

「エリザベス」ブライアンが呼びかける。
「あの女の近くに行ってくれ、
キャビンアテンダントが気流がひどいときシートベルトをつけるような席は近くにないのか?

とにかく君を通して念を送るには、一度は君が近くに
彼女を感じられるような位置につくことが必要なんだ」

ブライアンはニューヨークに来るとき、乗っていた機の周りの乱気流を追い払えたと
感じた思念を逆に作用させることを考えていた。

ブライアンの脳裏にエリザベスの乗務する機の周囲で
急激に雲が湧き起こり密集してゆく様が描かれる。

コックピットからシートベルト着用のサインが出され、
エリザベスがあの女を見やすい位置についた様子がブライアンに伝わった。
ブライアンはエリザベスを中継点とし、女の思念をさぐり、さらに思念を送り込んだ。
ダリアが行動を開始した。通路をゆっくりなにかを探すように前へ進み、
不安げについてきたキャビン、アテンダントをいきなり羽交い絞めにすると脇に銃を突きつけた、
カーテンの蔭の誰にも見られない場所だった「コーヒーを持ってきました、・・・・
でもなんでもいいから、操縦席の扉を開けさせなさい」

「言う事をきくのよ、そうすれば全員無事に明日の朝が迎えられるわ」
「エミリー」・・・ダリアが名札を確認しながら続ける
「先ずその電話で操縦室に連絡を取りなさい、言う事をきかなければこの飛行機を爆発させるから」
ダリアの行動開始のあと、操縦席からアナウンスがあるまで
他の仲間3人はそれぞれの席で待機している、
というのが、搭乗直前の簡単な打ち合わせだった。

3人はダリアがどんな要求をつきつけることになるのかすら、良くわかっていなかった。
残りの仲間の逮捕があった以上、計画は取りやめになり、
それぞれ地下に潜ることになると想像していたのだ。
ダリアは操縦室でキャビンアテンダントのエミリーを抱きこみ、
銃を突きつけていた。機長のチャ−ルス・ライアンを見据え「私の話を良く聴くのよ、
さもないとこの場で、この娘を撃つ、客室にも武装した仲間がいることを忘れないで」

「我々の要求は今朝ロスで逮捕された4人の即時解放よ、
要求が通らなければこの機を墜落させる」
そこまで一気に喋ると、声を潜めるように・・・・
「ここまでが表向き、・・・・良く注意して聞いて、私は本当はこんなことをしたくないの、
こんな事件は引き起こしたくなかったの。
でもこのハイジャック事件が起きなければ、
私は裏切り者として今後死ぬまで仲間に狙われる」
「この飛行機に乗っている乗客、乗務員、全員がNYに無事に着くことを願うなら、
私の言う事にしたがって頂戴」

「まずハイジャックされた・・・犯人側の要求は4人の逮捕者の即時釈放・・
と連絡するのね」
「まだ待って、話は終わっていないわ、
これから武器を持った二人ともう一人を順にここに呼ぶのよ。
機長の『この先の気流の情況が悪化している、
迂回する必要があるのでNY到着時間がかなり遅れる』というアナウンスが合図。
アナウンスの前にハイジャック通信を・・・もう信号は出しているでしょうけれど
何処かの官制塔なりと連絡をとるのよ」
「こちらアメリカンエア  803便・・・・・」

ハイジャックの連絡が入り、地上では大騒ぎになっていた、
FBI、国家安全保障局の係官が緊急連絡を受け、
空港管制塔に駆けつける、そんな間に・・・・
アメリカンエア803便からの連絡はさらに緊急度を増していた。
機内で何発もの銃声が響きそして長い沈黙の後
「こちら・・・・エア 803便、事件は解決した、予定通りNYに向かう」

またしばらくの沈黙があり「犯人グループ4名は全員死亡、
警備乗務のFBIエージェントが犯人4人を射殺、自身も撃たれて死亡した」
と報告がはいる。地上ではFBI、国家安全保障局の係官が
キツネにつままれた気分で呆然としていた。
803便からそれ以上の詳しい説明はきかれることのないまま
エリザベスの機はNYに無事到着した。

NYラガーディア空港に到着した803便にFBI、警察が殺到し、
救急車が5つの死体を運び出した。
病院へ向かう途中ダリアの死体が何処かに消えてしまったことは公にされなかった。
翌日の朝刊では犯人4名を射殺し、事件を解決した殉職FBIエージェント、ダンカン・トラビス
の名前と写真が一面を飾り「今はもう物言わぬヒーロー」
としてハイジャック事件のことが大きく報じられていた。

翌日の夕刻、乗務した機を降りる間ももどかしく電話してきたエリザベスをブライアンが
「大丈夫かい、先ずここに帰っておいでと優しくいたわる」

コンドミニアムの食卓には、
赤のボルドーワインと最高の神戸牛のカツレツ、サラダ、特製のサンドイッチが並べられていた。
肉はインターネットで知った飛び切りのステーキ肉を売る店で仕入れ
ブライアン自身が料理したものだった。
コンドミニアムに帰り着くとすぐに一口つまみ食いしたエリザベスが
「ワオ・・このお肉最高」と歓声をあげ、「サンドイッチも食べやすそうでいいわ」
というとブライアンを抱きしめ着替えに2階へ向かった。

食事が始まるとすぐにエリザベスの質問が開始された、
「結局なにがどうなったのか、よく判らない、
こうして無事にもどれたのは、貴方の御蔭なのよね」
「あの女性はどうなったのかしら、彼女は筋金入りのテロリストでもなかったんでしょう」

「犯人グループは全員FBIの警備官に射殺された。彼自身も銃撃戦で亡くなった」
っていう新聞記事を見たわ、
でも本当は最初に殺されてしまったのがトラビスというFBIのエージェントなのよね」
「私、口を閉じているのが本当に辛い感じだった」
「ここに居たままの僕との接触で、君がどこまで知ったかはある程度、把握しているつもりだけれど」
「まず、・・・あの女性は生きている、その所在は誰も知らない。
FBI,や国家安全保障局、警察といった機関も知らなければ、
彼女の所属していたテロ組織の人間も知らない」
「彼女は、本人が望んだ場所に僕の超能力で移送した。以上」
「ずるいわ、彼女すごい美人だった、私よりも若かった」
「本当は貴方がどこかに隠しているんじゃないの」
エリザベスが半分本気でブライアンを問い詰める。
「そんなことは、していない、誓うよ」というブライアンの表情には
完全には説得しきれないなにかが消えていないようにエリザベスは感じていた。

「君にもわかったとおもうけれど、彼女は半分誘拐されたようにあのテロ組織に加わらされた、
アリとかいうハンサム男に16歳で誘惑されて、
彼女自身そのハンサムに死なれて組織との絆が切れてしまったと感じていたのに、
テロ事件の首謀者的位置にまで押し上げられていたんだ」
「ところで次の君の仕事・・・乗務は明日なのかな」


「なんだか、一寸ごまかされてしまった感じ・・・」
「明日またフライトよ、貴方はここでおとなしくお留守番
ということでもないでしょうけど、どうするつもり」
「少し、あちこち見て回ろうと思っている、
何かのビジネスを始めなければならないかなと思って」
「この世界で何処かの会社とか、組織に雇われるのも考えものだし」

「小さな企業とか会社を買い取ればそこの従業員という、知り合い、人間関係が作れるし」

「そんなことを考えているのね、行動に移すときには私にもちゃんと教えてくれる?」



続 き へ

異空の神 TOPへ

異空の神 第1巻はこのあとも順次掲載していきます
既に完成済みですが、挿絵制作、文章校正のため
以降増ページまたは既に取得済みの別URLによりお応えしていく
つもりですお読みいただく読者の励ましをいただき
頑張っていきたいと思いますボリュームは単行本350ページ
ほどになります

お節介親父

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