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                                    異空の神

第1巻

第1章

秘密実験

砂漠の失踪者



カウントダウン

続き


アキオは日本全国にネットワークを有する東京のテレビ局の職員だった。
ブライアンはたまたま仲間二人とゴルフの予定を組んでいた矢先で、
「もう一人メンバーに加えてもいいな」と考えていたところだった。

・・・・アキオから声をかけられ、彼の目に自分と同じようにゴルフを愛する
熱意を感じとり、
「わかりました、ご案内しましょう」と答えたのが彼との付き合いのきっかけ
だった。

 数日後、基地のゴルフコースでのプレイのあとアキオが
「次回は僕のホームコースに招待します」といってくれた。
一月ほど経った非番の土曜日、横田基地から車で40分程掛かる、
アキオのホームコースでのラウンドの後、ブライアンはゴルフ場の大きなジャ
グジー、サウナ、冷たい水風呂を楽しみ、汗を流した。
引き続きアキオが招待してくれたダイニングルームでのビールは格別だった。

 美味い寿司、神戸牛のステーキ、という素晴らしい食事がほぼ終わり
コーヒーに移ったときだった。ゴルフの話に花が咲き、
さらにアメリカのゴルフツアーの話題にまでなってゆく(日本人ほど外国のこ
とにいつも関心を抱く国民も珍しい、)
アキオはなかなかの腕前だったが、ドライバーの飛距離は
ブライアンが上だった、「あれ位ドライバーの飛距離があれば、私のスコアは
もっと良くなる」としきりに羨ましがるアキオに、
ブライアンは「ところで、日本には素晴らしく美味しい果物がありますね」
と立川のデパートで見つけた“見事な大きさ、形、の本当に美味いイチゴ”
の話をして、日本の農業技術をほめあげ、
「なんとかあの素晴らしいイチゴをアメリカで栽培できるようにする技術が手
に入らないだろうか」と話していた。
するとアキオは「何か方法がないか探って見ましょう、
しばらく時間をください」と答えてくれた。

アキオから連絡があったのは10日ほど経った日だった。
「MR ラウル・・・時間が空いたら電話をください」
というメールが届いたのだ。

 メイルでの連絡は勤務時間中の電話はお互い好ましくないという
気遣いだった。
 
 夕刻アキオに電話をいれると、
「美味いイチゴの産地として知られている静岡に私の友人がいます。
村田さんといいますが、彼は静岡のTV局の人間です、
彼の局と私の局はネットワークを組んでいるので仕事の関係で私は彼と
とても仲がいいのです、彼の父親は静岡でイチゴを栽培しているそうです」
「彼は親父の作っているイチゴは世界一だと言っています」
どこか日本人らしい奇妙な言い回しで話すアキオの言葉に一瞬苦笑してしまっ
たブライアンは、「彼にとって英語は外国語、日本に居ながら日本語を殆ど喋
れない自分の方こそ笑われてしまう」「それより自分の頼みをちゃんと考えて
いてくれたことに感謝しなければ、まず礼を云うべきだ」
と意識を切り替えた。
ブライアンの脳裏を過ぎったのは既に亡くなっている母方の祖父、
青木三郎助の堅苦しい英語のしゃべり方だった、ブライアンの記憶にある
三郎助は日本の商社の米国子会社をすでにリタイアした後の70歳から80歳
過ぎの姿だった。

ブライアンとアキオが東京の中心に近い、品川という高層ビルに囲まれた駅か
ら新幹線に乗り静岡に向かったのはそれからまた10日程あとの日曜だった、
時速300KM近いスピードで走る新幹線はそのスピードを感じさせない静か
さで250KM離れた静岡駅に1時間足らずで滑るように到着した。
駅で迎えてくれた村田氏はあまり英語を話せないようで、「Nice to 
meet you」とだけ英語で挨拶すると、
どうぞといって彼の運転してきた車に二人を案内した、休日ということでやや
車が込んでいる市街を10分ほどで抜け、
やや上り坂になった道を20分ほど走ると村田氏が「Here we are
 now」と、一軒の家の前に車を止めた。

村田の父親はまだ50歳そこそこにみえるやや小柄な人物だった。
ゴルフを一緒にした後で知ったアキオの年とその後の彼の口振りからすれば、
村田の年は少なくとも30を越えているはずだった。
後でわかったことだが村田の父親の年は57歳だった。

村田の父親がイチゴの栽培にかける情熱をひとしきり話すのを
アキオが通訳する。
村田の父親が庭先に一行を案内しながら、その向こうに見えるビニールハウス
を指差し、「大事に育てています、」
と言うと後ろを振り返る。
村田の母親らしいこぎれいな中年女性が見たこともないほどの大きな苺を盛っ
た深皿を差し出し、夫に手渡しながら「召上ってください、美味しいですよ」
とブライアンのほうに向き声を掛けてきた。

ブライアンはまずそのイチゴの大きさに驚いていた、小ぶりのリンゴほどもあ
るかと思えるほどの大きさのそのイチゴは、
「この大きさで・・・考えられない」と声をあげたほど繊細な美味さ、口ざわ
りだったあの立川のデパートの高級食材売り場で知った、あのイチゴよりもさ
らに大きく素晴らしいものだった。

「日本でもこのイチゴはなかなかお目にかかれない筈です、栽培には肥料も温
度も、大変気を使わなければなりません、普通のイチゴの2倍以上の値段でな
ければ、
そう、グラムあたりで売るわけにいかないものです」「この技術は国内ではあ
まり出したくありませんし、外国に出すにも条件をしっかりと契約していただ
かなければ、なりません、・・いえいえお金ではありませんよ、出来たイチゴ
の半分はこちらにいただきたいのです」一瞬あまりにひどい条件にブライアン
が怒鳴り出しそうな表情になると、
「怒らないでください、こちらにもらうと云うのは、適性な値段でこちらに輸
出して欲しいという意味なのです」私の農場の規模では今以上に出荷の量を増
やせないのです。共存共栄、悪い条件ではない筈です」「無論カリフォルニア
からこちらに痛みやすいイチゴを運び、消費者、といってもごく限られた、ホ
テル、レストラン果物専門の店などに届けるのは大変なことです、その辺の問
題をクリアするとして、後々は最優先出荷先に、という意味でお願いしておく
ことになると言うことです」

ブライアンの父親の農場から日本へ輸出されるイチゴはまだわずかだったが、
地域的に限られた受け入れ先に出荷されたあの素晴らしく美味い大きなイチゴ
はカリフォルニア中の高級ホテル、レストラン、そしてスーパーマーケットの
高級果物売り場に供給され一農家としての売り上げとしては記録的なまでに延
びたのだ。
ブライアンの乗るレクサスもその褒美として父親からプレゼントされたものだ
った、アメリカの家庭にしてはめずらしくブライアンには兄弟、姉妹がいなか
ったため「父の農場には、例え、経営そのものを引き継がなくても先々まで関
係をたもっていきたい・・・そこから縁が切れるのはさびしい」ブライアンの
のこころにはそんな想いが時折過ぎる。
これまでの自らの軍人としての人生と混ざり合って錯綜した思いが浮かぶのは
結婚、そして家庭という言葉を意識したときだった。


                                

6月20日午前10時30分、地下深いエリア60の一室・・・ブライアン、
ダグラス将軍、ランドルフ空将、物理学者フィンチ、が最後の打ち合わせに入
っていた。
改めて確認します「移送目標空間は決定どおりニューヨークあの、国連ビル近
くの旧空軍ビル、ほんの最近まで空軍でTVの広報プログラムなどを制作して
いたスタジオ仕様の広い部屋・・というか空間、先月全員で、いやダグラス閣
下以外のここの3人と助手のジュリアとカシューが十分見てきたあの場所なの
で安心してください」とレオナルドが口火を切る。

「目標地点にはエルトロの時と同じスタッフが待機しています、到着後はエル
トロの時と同様面倒な審査が待っているが中佐我慢してください」

ダグラスが口を開く「それが済めばまた1週間、休暇だ、そして君の身の振り
方についてはじっくりその間に希望や主張を考えておくんだな、出来うる限り
応じるつもりだ、一言だが大統領のYESもとってある」

レオナルドが続ける「現地には一応ブライアン名義の身分証、
クレジットカード、現金500ドルが用意されています私物はこちらに後日取
りにきてください」
「私物は実験の対象外なものですから・・」
「他に特に問題はないと思います、こちらへの帰還は空軍が車も軍用機も用意
しています。とりあえずこの基地に一度戻って・・・・、まあその辺はどうで
もいいことです」
殆どの情況はエルトロへの移送実験のときと変わりなかった、レオナルドの説
明では移送の距離が伸びる分、投入されるエネルギー量が一桁ちがうというこ
とだった。
実験開始は正午、だった、といっても開始と同時に結果待ちというのは前回ど
おりだ、あのプレートの上に立つブライアンが消え、ニューヨークに無事現れ
るか、がすべてなのだ。
スタッフが機器、メーター類の点検にあわただしく動きまわり、前回同様、携
帯パソコン、携帯電話、銃、ナイフを携行し
ブライアンがプレートの上に立つ、

Xマイナス60秒59,58とカウントダウンのアナウンスが実験場に静かに流れ
る、9,8、7・・・・ZERO 巨大なドーナツの12のポイントから青い
閃光がその中心、ブライアンの立つプレートと、ブラアンの頭上をこれも巨大
な傘のようにおおっている透明なプラステイックかガラスと光る金属で出来た
円筒にむけ激しく飛び交う。プレートからブライアンが消えていた。


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