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                                    異空の神

第1巻

第1章

秘密実験

砂漠の失踪者


秘密基地

続き



究極の実験目的となったのは「超大型物体、と人員の瞬間移動、
不可視化」・・・まさにSFを地でゆくような実験だった。
一説にはレーダーに捉えられないための電磁波撹乱の実験とも伝えられたが、
狙いはそれ以上のものだった。
フィラデルフィアの湾内に浮かぶ駆逐艦エルドリッジと、
その乗組員を強力な磁場で包み込んだとされる実験は悲惨な失敗に終わった
と極秘記録に残されている。ただ駆逐艦エルドリッジが数分のあいだ、
実験を見守っていた多くの軍、及び政府高官の目の前から消え去り
何千キロも離れた合衆国の沿岸に一瞬移動し、
たまたまその沿岸に展開していた艦船と軍関係者により目撃されたこと。
そしてまた数分後フィラデルフィアに戻ってきたことが記録されている。

しかしその艦上では恐ろしい事態が発生しており、記録によれば、
多くの乗組員が精神障害をきたし、
奇妙な病気に見舞われ、駆逐艦の艦体に身体半分が溶け込んでしまい
死亡するというあまりに奇怪、悲惨なケースまで報告されたという。
研究は破棄され、実験の記録も記録保管所の奥にしまい込まれ、
また軍によるこのような物理研究の主力が海軍から空軍に移ったため
このことは殆ど忘れ去られていた。

レオナルドの説明が続く「理論的な問題そして必要なエネルギーの量、
大きさという問題も解決しています」
「現段階で物体、動物、兵員の瞬間移動、移送に大切なのは
移送先に空気や細かな浮遊物以外なにもない十分な空間を確保することです」
「実験の精度を上げ厳密に到着地点に移送するためには、
目標座標を確実に誤差1M以内に確定させることが必要とされます」
「この問題は現在の軍事衛星の能力が解決してくれました」
目標空間がどこであれ、条件をクリアすることは可能だという結論に達し、
現段階の実験装置作成に踏み切った、というのがこれまでの経過です」
「ただ本格的に大きな物体を移送するにはこちらの空間がいきなり
空っぽになり目標空間の空気が瞬間に排除されなければならないわけ
ですからまだまだ解決すべき問題はある訳です」
「今日は初めての兵員移送実験でご承知のようにラウル中佐が志願してくれました、
目標空間は現在カラッポにしてあるエルトロの格納庫です」

 注★  エルトロ・・・カリフォルニア州南部 
  ロサンゼルスから車で40分程のところにあった空軍基地
映画インデペンデンスデイではウィル・スミス扮する空軍飛行士が所属していた
この物語では
新基地が建設され名称を引き継いでいる



「ラウル中佐本人は本当に志願したのか?」
「はい、彼はそれとなく匂わせたこの研究に興味を持ち、
二階級特進とその後の進路選択の自由を条件に実験に参画しています」
「彼は実験の危険性も理解しています」
「ああ、そうだったな、その条件には私もサインした」
3人が通路を進んでゆく。そして二つ目の扉を抜けるとそこには
屋内競技場ほどの空間がひらけていた。

空間の中心にはガラス張りのエレベーターを思わせる、
上部がドームのようになった円筒が吊り下がり、
その下に直径3Mほどの円盤状のプレートが見える、
直径10Mもの金属の床から太さ50CMのアームが周囲に向け12本
延びておりそれが直径3Mもありそうな円筒でつくられた巨大なドーナツを支えていた。
ドーナツは差し渡しが30Mもあるかと思われる。
「ラウル中佐はあの真ん中のプレートに立ちます」

「ラウル中佐、到着されました」背後で警備兵の声が聞こえると
ブライアンが警備兵に案内されて一行に合流する、実験の開始に備え
数名の研究員があわただしく装置や周囲の機器を点検している。
「透明人間実験は無理だということだったが、・・・無論参謀本部の
最大関心事は、瞬間移送なんだが」とオルソン

「将軍」フィンチが口を開く「透明、・・・兵員や武器、戦闘車両、
などの不可視化はいまのところ一連の実験から無理だと結論しています」
「例の古いレポートでは一時的に実験対象が透明化した、という報告があるのですが、」
「不可視化ということは、物体を歪曲空間に送り出したことによる結果なのです」
「物体を移送するという一つの運動の中間を捕らえた情況な訳でして、
そこまでのコントロールは現段階の理論、技術では不可能・・と思われます」
午前11時45分
ブライアンはピストル、小型のパソコン、携帯電話、ナイフを携行し
装置の中心、あの円形のプレートの上に立っていた。
コンピュータ、武器、通信機器の移送も実験の目的とされていたのだ。
しきりに低くウナルような響きが高まり、時折閃光が走る、
実験開始10分前のアナウンスが場内に流れ、全員が再度の機器、
メーターの点検にあわただしい、
そしてついにXマイナス60秒のアナウンスから
59、58とカウントダウンが開始された。
一瞬の出来事だった、プレートの上のラウル中佐は消えていた。
「どれくらいで結果がわかるのかね」とオルソン
「成功していれば、・・勿論成功を信じていますが・・
2、3分でエルトロに到着したブライアンからも携帯電話の確認も含め
そこのスクリーンに顔を見せながら報告があるでしょう」
(★   エルトロ・・・ロサンゼルスの南、数十キロにある空軍基地)

「到着空間で万事異常なしの確認が取れればエルトロのスタッフからも
連絡がある筈です」
30秒程の沈黙が流れ、突然「ラウル中佐殿、到着です、
確認とれ次第ご本人から通信実験の予定です」
エルトロのスタッフの声だった。
待つほどもなく、呼び出し信号の後、スクリーンにブライアンの顔が現れた。
「携帯電話も無事なようです、パソコン、銃器になにも影響は出ていないようです、
さてと・・・・私はこれより休暇に入りますので失礼します、・・勿論医師の診断は受けますご心配なく、通信完了」
実験は見事に成功した、
しかしエルトロのチームは簡単にブライアンを離してくれなかった、
身体中をCTでスキャンされ、採血を繰り返し、脳波測定、心電図、胃カメラ、と娑婆の暮らしは
3日お預けとなり外部との連絡も禁止された。
やっと4日目昼にフィンチの助手 ジュリア・ロレーヌ  
 カシュー・アンダーソンの二人が(ブライアンがなかば監禁されていた病室のような部屋に)
やって来ると「すべてのテストが終了しました。
中佐の車はお申し付けどおりカシューが外のパーキングに
駐めておきました、」とジュリア

「やあ・・いい車ですね、大切に転がしてきましたからご心配なく、
すぐにでも遠出ができるよう満タンにしてあります」
カシューがブライアンに レクサスのキーを手渡す




カウントダウン


ブライアンはいまやっと休暇を手にしていた。
カリフォルニア州オレンジ郡。サンクレメンテ、・・・
海岸沿いにアムトラックの線路が走り、
その向こうに海岸通りから沖へ一キロもの桟橋が伸びている。
友人との契約で去年から借りていた家具付き、
広さ150平米ほどのアパート、は久しぶりの休暇に心の整理をするのにはいい環境かも知れなかった、
そこは海岸から100Mほど坂を上った住宅地の入り口に位置していた、
これまでも週末ブライアンの都合の良いときアマンダが泊まりにきてくれた、
しかしブライアンの仕事の性格を少しずつ知るうちアマンダの心の中に
不安が増幅していくのを止めることは困難だった、
「貴方のことは好きだけど私みたいな女にはちゃんと将来の生活が思いえがける相手が必要なの、
何時も、どんな危ない仕事かわからないことばかりしている、
させられている、ということかも知れないけれど、
実験機に乗れば何時、落ちるかも知れないって言うし、
何日も行方知れずになるし、

軍の機密事項だから話せない、・・・
『例え夫婦になったとしても機密は護らなくてはならない』では、
とても貴方と一緒に生活して、子供を産んで幸せな家庭生活を築く
なんて夢としか思えないの、自信がもてない気がするの」

ショートパンツとTシャツという軽装で桟橋を沖に向かって歩きながら
ブライアンはアマンダの言葉を思い返していた。
周囲には観光客が思い思いにカメラ、ビデオを手にし楽しそうに
行きかっていた。
誰かが「ペリカンよ」と感嘆した声をあげているのが耳に届く、
ここでペリカンはそう珍しいものではないが、
目にした光景は素晴らしいものだった2羽の大きなペリカンが翼を広げ観光客に囲まれ逃げもせず
海から取ってきた小魚をついばんでいるのだ、
かなり大きなリュックを背負った初老の男がブライアンに向けカメラを差し出すと
ペリカンと一緒のところを撮って欲しいという仕草をする。
仕方なくカメラを受け取り二枚の写真を撮ってやると、
「サンキュー、イングランドから来ました、
ここは気候もいいし素晴らしいところですね」と礼をいった。
6,7歳にみえる二人の男の子が走りよって来ると「僕達も」と初老の男のそばにより
ペリカン達を脇にして寄り添う「孫達です」男はうれしそうに笑みを浮かべると
「もう一枚」といいながらカメラをさしだした。
「今度はビデオモードですから赤いボタンを一度だけ押してください、
後ろの海も写してくれますか」
ビデオカメラに男と子供たち、ペリカンをおさめさらに海に向かってカメラをパーンさせると
遥か沖合いに力強いクロールで泳ぐ若者が目に入った。男にカメラをかえすと、
「サンキューいい思い出になります」と挨拶する。
男と子供たちはアムトラックの線路のほうに歩き出した。
突然ポケットのなかでバイブレーションを感じる、緊急事態に備え、
一応は持ってでなければならないと仕方なくポケットに入れていた携帯が着メロを鳴らした。
「休暇の邪魔をする気ではないんだが、次回の実験に取り掛かるための日程が決まったので知らせておく、」
スティットソン空将だった、「X時は6月20日、正午、そこはサンクレメンテだな、
前日6月19日、朝8時にアパートまで車が君を迎えに行く、
慎重に相手を確かめてから車に乗ってくれ、合言葉はこの前決めたとおりだ。
今日は6月4日だから君の休暇は1週間延長されたということだ、身体には気をつけてくれ」
電話はスクランブルの掛かった盗聴不能のものだった。
「思い切り羽根をのばして、ゆっくりしていればいいということだ」彼は口の中でつぶやいた。
そして決心が心の中で形を取り出していた。
アマンダを呼び、不安をあおらないようにしながら、「今月20日ころから重要任務につく、
心配することはない、数日で終わる、
帰ったら君が納得できる二人の将来について話をすることが、できる」と告げるのだ。
ブライアンはカリフォルニア、カーメル近郊の農家で育った、イチゴの栽培
がメインで今では高級果物の特産農家としてカリフォルニアでも有名な存在
になっていた。
他の農家では真似のできない新しい技術で作られた大粒で,しかも美味、
見た目も美しい品種を育てていたのだ。
ただ特別に高価であったため、周りの農家とは異なるマーケットを
対象としていた。

元々は特別な存在と云うような農家ではなかったのだが、・・・・今のよう
になったのはブライアンが日本のイチゴ農家の技術導入に道を開いたのがき
っかけだった。
数年前ブライアンは母方の祖父の国、日本の横田基地に配属されていた。

基地から数キロの距離にある立川というにぎやかな街にはいくつものデパー
トメントストアがあり、食料品売り場では多くの高級食材が並んでいた。
そこで売られていたこれまで見たことのないような大振りのイチゴがブライ
アンの目を引いたのだ。
かなり値ははるが見栄えが素晴らしい、さらになんと言ってもその口触り、
甘さ、適度な酸味が父の農場で作られていたものとはあまりに違うのだ。口
に含み歯を立てたときのガリガリした硬さは全くなかった。
とても同じイチゴとは思えない、まるで違う果物というのが実感だった。

ブライアンは父の農場でなんとかこんな素晴らしいイチゴを作ることが出来
ないだろうかと考え始めていた。
そして以外なところにそんなイチゴを生み出す技術へブライアンを導くきっ
かけがあった。
基地のゲート近くのイタリアレストランで声を掛けてきた若い日本人、
アキオ・山下だ。

「失礼ですが横田基地の方ですね、・・・・・・もしかして、日本語を話さ
れますか?」後で分かったことだが、ブライアンが軍服を着ていなかったこ
と、そしてかすかに感じられる、東洋系の面差しがアキオにそんな質問のし
かたをさせたのだった。
ブライアンが「基地の人間ですよ、でも日本語はちょっと・・・・」
と答えると、アキオはまた英語で「この基地の中にゴルフリンクスが
ありますね、
実はなんとか一度あのコースでゴルフをプレイすることができないものかと
思っているんです。
あそこでプレイさせてもらう、何か方法はないでしょうか、実は日本語では
“願掛け”というんですが、
東京のすべてのゴルフ場をプレイしたいという願いを立てたんです。

あの横田の基地の中のコースも東京都の中なんですよ。
私には同じようにゴルフ好きの友人がいまして、彼に「横田基地の中にある
、あのコースはまだプレイしてないだろう」と自慢されてしまいまして。
彼はたまたまこの近所に住んでいるので基地の中に住むエアフォースの人と
友達になったらしいのです・・
一種の賭けみたいなもので、・・彼自身に頼むわけにいかないものですから
突然ぶしつけなお願いで申し訳ないのですが・」と話しかけられたのが彼と
の出会いだった。        


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